自民党大勝は二正面作戦で(2)


1986年の衆参同時選挙で、中曽根は、「公共事業などの利益誘導政治という従来型の政治で権益を受ける集団に依拠しつつ、都市中間層にも風呂敷をひろげた。たとえば、牛肉・オレンジの自由化。要は両方によい顔をした」*1とのべた。
けれど、3年後に自由化がはじまると、農協の青年部はいっせいに「蜂起」し、自由化に反対する。その名残だろうが、最近まで、水田や農地に自由化反対と大書した農協青年部の手作りの立て看をあちこちでみかけた。中曽根は売上税導入を打ち出し撤回後、総理の座を竹下登に譲る。が、その上に、リクルートスキャンダルと消費税導入によって、利益誘導政治に反発する都市中間層もまた、怒りを爆発させた。その結果、89年の参院選自民党議席は半減した。二正面作戦も長くは続かないものだ。
一方の小泉。小泉は、都市中間層のうち「B層」と位置づられける部分の強い支持を得た。すでに十分「小さな政府」である日本で、小さな政府をという小泉のアピールはうけ、支持を広げたのだ。
その支持がどこからくるのか、アウトラインをなぞっていくと、このとき都市中間層を取り囲む環境は従来から変貌していた。たとえば以下の各項が解体されていて、ここらあたりが支持にむかう背景となっているだろう。

  • 大企業を中心とした長期(終身)雇用と福利厚生システム
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  • 公共事業とたとえば中小業者むけ保護・規制政策などの利益誘導政治
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  • 育児や介護などの家事労働の存在
これらは、自民党にとっては政権保持のための安定装置として機能してきたものだ。逆に、国民はこれにからめ取られてきたのだが。こうした囲い込みが壊れてしまい、生活の先行きも定かではない不安に国民は直面することになった。
そんな中で9・11選挙はおこなわれた。不安社会のなかで、都市中間層は、囲い込み社会を支えた国会財政の危機、安定している公務員のバッシングにうなづき、小泉のさけぶ「改革」に期待を寄せた。


先日、辞任表明した安倍は、だから「改革」の継承する任務、小泉「改革」で生まれた社会の亀裂を修復する任務を担わされてきたといえる。