妊婦たらい回しは防げるのか


事件が繰り返されるのは、事故の原因が構造的なものだということを示している。
昨年も、同県で同様の事態に至り死亡につながったが、いうまでもなく奈良県だけの問題ではない。

いわゆるたらい回しは、容態が重篤、深刻なものと、まず想起させる。重篤、深刻なものであればあるほど、一般には人的体制も、医療設備も厚いものが求められる。受け入れ可能な医療機関は限られてくる。

原因が構造的なのは、今日の医療制度がしからしめているという面がある。だから、現状をかえないと事故は避けてとおれないともいえる。

一例をあげると、最近は、医師数の絶対的不足についてメディアもとりあげる機会がふえ、認識は深まってきたように思える。今日の日本の医療は、一つには医師不足に象徴的なように医療従事者の配置数が他国にくらべて著しく低いことによる。
人的体制を根本的に見直し、地域医療が崩壊する現状をあらためる必要がある。とくに産婦人科の地域からの撤退によって、とりわけて地方都市ではお産をすること自体が困難な状況にある。おそらく今回の事件はこんな日本の医療の現状を反映している。

現状をつくりだしたのは、これまでの低医療費政策*1に要因があるだろう。この路線でよいのか否か、国民的な議論をおこなう機は熟している。

こんな事件が起きると、えてして責任追及に走りがちだが、根本のところで医療の現状を見定めないと解決はしない。現状が、ひいては医療政策に原因があるということであれば、それを正すことだ。そうしてこそ再発防止の道もみえてくる。


花・髪切と思考の浮游空間;妊婦たらい回しはなぜ起こる。を一部改変。

*1:大沼昭人氏;医療立国論