国民投票法;運動の制限はじめにありき


法案提出者が答弁に窮する場面がしばしば国会審議でみられる国民投票法案。論戦で、法案の矛盾も浮き彫りにされている。だが、メディアはそれをほとんど報道しない。

法案は、国民投票に関する国民の運動を制限している。国の意思決定をおこなうにあたって、重要な事案に関して国民投票を実施するという視点にたてば、国民の運動の自由を妨げてならないだろう。今回の法案は、この点でいくつかの問題をはらんでいる。

その一つが、「地位利用」を口実にした公務員・教育者の国民投票運動の禁止である。なぜ公務員・教育者だけが対象なのか、法案を提出した与党はまったく説明できないにもかかわらず、禁止を譲ろうとはしていない。
これは、憲法99条にてらしても、矛盾するのではないか。
同条で、天皇国務大臣、国会議員などともに、「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定められている公務員なのだから、憲法の改定(の方向)には関心を寄せざるをえない。でなければ、尊重し、擁護する責任はもとよりもてないだろう。
しかも何が「地位利用」にあたるのか、その対象も明示されていない。
公務員にはその上、公務員法による政治活動規制もともなう。
はじめに規制ありきと思わざるをえない。

最高法規を改正する際の、国民投票の手続きを定めるのが国民投票法案である。ならば、たとえば以上のような欠陥をかかえる与党案をこのまま通してしまうわけにはいかないだろう。